Litterae Universales / imagologia

潮田文による「切り貼りの森」

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潮田文「印画紙の切り貼りで作った想像上の森」(月光増刊『南原四郎1970~1985』所載)。「たくさんの不要な印画紙から、植物にピントが当たっている部分だけを切り抜いて貼り合わせた」もの。今でも潮田氏(一名南原氏)のアトリエのどこかに保存されているはずだが、数年前(2007~10年くらいか)に実見したときは、貼り合わせた継ぎ目がかなり変色し、何枚か印画紙の剥がれている部分もあって、たいへん惜しいことだった。

80年代の書物は、書物として面白いものがとても多かったが、いかんせん図版に関しては、スキャンに耐える画質のものは少ない。これは写真集だからずいぶん綺麗な印刷ではあるけれども、それでも高解像度でスキャンすると粗さが目立つ。この作品はそもそも、写真にとって不可避な「ピンぼけ」現象をいかにして排除するかというコンセプトで構想されたのだが、その作品を写真集に載せるために写真に撮った時点で「不可避なピンぼけ」が生じており、それをグラビア印刷することでさらにボケているのを、あまりに高解像度でスキャンしすぎると、等倍で表示したときにこれまた当然ながら、もとの写真が有していたであろう白黒のデータに紙繊維の凸凹による網掛けが渾然と混ざりあいつつ隅々までドットへ解体してしまう。上の画像は、スキャン時のサイズからタテヨコ4分の1くらいに縮小したものだが、このくらいが、隅々まで最もくっきりと「ピントが当たって」見える「サイズ」かと思われた。望むらくは、潮田氏が保管しておられるであろう「実物」をそのまま、大きなスキャナーで可能な限り高解像度でスキャンしたのち、「実物」と同じ見かけの大きさになるように表示して見てみたいものだが。しかしそうしたところでそれが「実物大」かといえば、全然そうではないのだった。

昨年(2019年)、潮田氏が待望の新著『映像文化論』を上梓なさった。まだ御礼も申し上げていないので、おわびかたがたこれについて近々に何がしかここに、あるいは別ページに加筆するつもりでいる。

2014.5.1 / 最終更新 2020.5.4

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